あの空の音を、君に。



私がすぐに頷くと、伊月がほっとしたように微笑んだ。




「俺の聴力がなくなる前にさ」




もともと静かだったこの空間に、静寂が訪れた。


伊月のお母さんも、優花も、流星も、誰も何も話さない。


私も、そう簡単には息ができなかった。



しばらく間があいた後、伊月がゆっくり息を吸った。










「涼に、俺のサックスきいてほしい」









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