あの空の音を、君に。
「待ちなさい伊月」
伊月が言ってすぐ、お母さんが焦りを隠さず遮った。
「あなた、まだ音楽するつもりなの? もうわずかしか聞こえないんだから無理よ」
そう話すお母さんを見て、この人は伊月が音楽をすることを望んでいないことがすぐにわかった。
「音楽なんかしたって、あなたの将来何も得することなんかないんだから」
伊月のお母さんの言い方に、少しカチンときた。
『音楽なんか』
その言葉に、私の中にある何かが反応した。
「吹奏楽とかサックスとか、そんなのやってたら、また傷つかなきゃいけないのよ」
「違うよ母さん」
お母さんの口から伊月の音楽を侮辱する言葉があふれる中、伊月が静かにそれをとめた。