あの空の音を、君に。
「それって……」
「うん」
誰かに私が吹奏楽をやめた、と聞いたらしい流星は、それを知ったとき、驚きを隠さなかった。
「私、吹奏楽、もう一回がんばってみたいの」
偽りのない、本心。
今、私の体全身で、それを望んでいた。
私はもう、吹奏楽という抜け出せない迷路に迷い込んでいたんだ。
もう二度と、吹奏楽を手放すことはできない――。
「――だと思った」
「え?」
「涼は、吹奏楽やめないって信じてた」
流星の言葉に、目を見開く。
目の前の彼は、いつもは絶対にしないような優しい笑顔で微笑んだ。
「おかえり、涼」