あの空の音を、君に。



トン、と足を階段の一番上に置いた。


ぐっと力をいれて、体も上へあげる。




目の前には、大きな鉄の扉。



私は深く息を吸って、その扉に手をかけた。




ここで、私はどれだけ思い出を作ったんだろう。



ある日、ここで出会って。


ある日、ここでアドレス交換して。


ある日、ここで空を写メって。


ある日、ここですれ違って。


ある日、ここでキスをして。


ある日、ここで大切なことに気づいて――。



数え切れないほどの思い出を、この屋上でつくってきた。


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