あの空の音を、君に。



「ちょっ涼っ」



そんな私を見て、伊月が同じ目線の高さにしゃがんでくれた。



「悪ぃ。泣かせた?」

「ううん」



違う。



これは、泣かされたんじゃなくて――




「嬉しくて。涙が出てくる」




ただ、嬉しいだけで。

涙がその証。


私、誰かに必要とされてたんだね。


伊月の役にたててた。

笑顔になれる理由になれてたんだ。



「ありがと……伊月」



もっていたタオルを取り出そうとして、その手を止められた。


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