あの空の音を、君に。
「そっちは今日も弁当だね。うまい?」
「そこそこおいしいです」
「ふーん。俺、冷えてるご飯とかおかずとか、あんま好きじゃない」
その言葉は、今からお弁当を食べる人に向かって言う言葉だろうか。
そう言ってパンに心を奪われている彼は、早くも二個目のあんパンに取りかかっていた。
あんたの口は掃除機か、ってくらいものすごいスピードでパンが消えていく。
そんな一部始終を見ている私に気づいて目があった彼は、自分の持っている残り少ないあんパンをじーっと見た。
そして、チラッと私を見て言った。
「俺のあんパン、あげねぇぞ」
「私、そんないやしい人じゃないです」
本当に、パンのことしか頭にないらしい。