あの空の音を、君に。



「涼は何の楽器だった?」


「ペット」



私が短く答えると、伊月は昔のことを思い出すように、どこか遠いところを眺めていた。



「もしかして、東中でソロ吹いてたのって涼?」

「うん。よく覚えてるね」


「俺は変なところで記憶力がいいんですー」



伊月の口にフランクフルトパンの最後の一口が消えた。


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