あの空の音を、君に。
「あのソロ、俺好きなんだよなぁ。オラクリンの『インシグニア』」
「そう? ありがと。あれはキツかった」
人に褒められるのは、悪いことじゃないな、と思った。
だって、自然と頬が緩んでにやけてしまうんだもん。
「俺も西中でアルトサックスソロ吹いてたの覚えてる? シェルドンの『イベリアの冒険』」
「覚えてたよ。あれきいたとき、鳥肌たったもん」
ウソじゃなかった。
大げさにも言ってない。
あのコンクール会場で、西中学校のアルトサックスソロをきいたとき、会場内にきいていたクーラーのせいではない鳥肌がたった。
少しもずれないピッチ。
ほどよいビブラート。
そして、脳裏に見えてくるような情景。
あのときの感覚は、今でも鮮明に覚えてる。