あの空の音を、君に。
「伊月、今からでもここの吹奏楽部入ったら? 伊月が入ればちょっとは強くなるかもよ」
上手とも下手とも言えないこの学校の吹奏楽部に伊月が入ったら、どれだけ強力なことか。
でも――――
「俺、もう吹奏楽しないって決めたから」
そう思ったすぐあと、耳に届いたのは何ヶ月か前、私が言った言葉と同じ言葉だった。
そう言った伊月の表情も、あの頃の私と同じ、希望のきの字もなかった。
でも、私はそんな伊月の表情に気づかなかったんだ。