あの空の音を、君に。



「金賞とったのだって奇跡だよ。まぐれだっただけ」



パンの抜け殻の袋を片付けながら伊月が言った。



「そんなネガティブなこと言わないでよ」

「悪かったな、ネガティブで。俺はそういう奴なんですー」



袋を片づけ終えた伊月は、顔をあげた。

その顔は、悲しさなんて思わせないくらいの、いつものニヤッと笑っている顔。


やっと、いつもの私たちが戻ってきた。


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