あの空の音を、君に。
さっきも言った通り、私は運動神経が全くよくない。
そんな人が、急いで階段を駆け上がったら、どうなるか簡単にわかる。
案の定、右足のつま先に硬い衝撃を感じた。
今まで見ていた景色が、ぐらっと前に揺らいだ。
伊月が驚いた顔で慌てて手を伸ばす。
それでも、階段の床が近づいてくる。
反射的に目をつぶった。
「大丈夫か?」
耳の近くで声が聞こえた。
目を開けると、目の前に伊月の顔があった。