あの空の音を、君に。



「ねぇ、伊月」




「ん?」




数秒遅れて返ってきた返事。



『怖い』



私の心にそんな思いが溢れ出てきた。



思い出される、あの日のこと。



突然聞こえなくなったあいつの声。

消えたあいつ。



無意識のうちに、手が震えてくる。

止めようとするんだけど、震えが増すだけ。



怖いよ――……




「どうした?」




伊月の声が耳に届いた。

その視線の先には、震えている私の手。


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