あの空の音を、君に。
「帰り際に、海に言われた。『俺と伊月、どっちが好きなの?』って。里麻、最初その質問の意味がわかんなかったから答えられなくて。そしたら海に『迷うくらいなら別れる?』って言われて」
再び、里麻の目に涙が潤い始めた。
里麻のチャームポイントの長いまつげが瞬きするたびにふさふさと揺れた。
「海がどうしてそんなこときいたのかわかんない。でも、ほんとはね、自分でもわかってた。海と話すのと伊月くんと話すのと、どっちが楽しい? って聞かれたら、どっちの名前を答えてしまうのかもわかってた。でも、海とは別れたくなくて。そしたら、自然と涙がでてきて」
里麻がうつむきながら言った。
その声には、何か迷いがあるように感じた。
そんなの、ただのわがままでしょ。
心の中でそうつぶやくけど、口には出せない。
親友を失いたくなかった。