禍津姫戦記
 ハバキは顔をあげて、丑寅の方角をにらんだ。ちりちりとうなじの毛が逆立った。
 なにかが、地を這うように近づいてくる。
 
「若長、折り入ってお耳に入れたき儀が」

 クラトが低い声で云った。カリハが気づかって下がろうとしたが、ハバキが制した。

「よい。カリハに隠すことはない」

 クラトは板戸を閉めて用心深く声をひそめた。
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