禍津姫戦記
「おぼえていないな」
「お戻りになったのは三日目の朝でした。館の外から声がして、出てみると、ハバキさまが喉を裂かれた灰色の狼をかつぎ、燦々と朝日を浴びて、笑いながら立っていらした。
イスルギ様がお叱りになると、この狼が母者の御魂を連れ去ろうとしたので殺したのだとお答えになった。それで父君は二十回鞭で打つところを十回でお許しになったのです」
「ああ、それで思い出した。あのあと、三日も馬に乗れなかった」
ハバキは笑った。
「お戻りになったのは三日目の朝でした。館の外から声がして、出てみると、ハバキさまが喉を裂かれた灰色の狼をかつぎ、燦々と朝日を浴びて、笑いながら立っていらした。
イスルギ様がお叱りになると、この狼が母者の御魂を連れ去ろうとしたので殺したのだとお答えになった。それで父君は二十回鞭で打つところを十回でお許しになったのです」
「ああ、それで思い出した。あのあと、三日も馬に乗れなかった」
ハバキは笑った。