禍津姫戦記
 男は狂ったように笑い出した。その声は常軌を逸したように甲高く引きつっていた。ハバキは男にとびかかり剣の柄で殴り倒した。たしかに男の額には墨で、火に似た文字が描かれている。
 姫夜は、注連縄のかかった岩にくみついて、満身の力で岩を揺り動かしている村人たちを指さした。

「ハバキ、あのものたちを止めてくれ。だめだ――」
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