禍津姫戦記
「わたしは神につかえる身でありながら、こたびの奇禍を予知できなかった。今、こうしていてもわたしの耳には、溺れてゆく水ノ江の民の声が聞こえる……神を呪い、我が身の運命を嘆きながら、黄泉へ旅立っていった魂の悲鳴が。ハバキには聞こえないのか? わたしはカツラギに禍(わざわい)を呼び込んだ――」

 ハバキは激しく遮った。

「おまえのせいではない」
< 240 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop