禍津姫戦記
 人々は袖を引き合って、すこしでも近くから見ようと、駆け寄り、高楼を見上げた。
 姫夜の美しい頬はこころもち青ざめ、唇だけがさえざえと朱い。長い髪には真珠を編み込み、頭上には銀の粒と碧玉をつなぎ、光の滝のように両脇に瓔珞を垂らした星の冠をいただいている。
 ハバキと姫夜とがならんだところは、柱のまわりをまわって契り、この葦原の国を生んだとされる男神と女神の姿にも見えた。
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