禍津姫戦記
 神門の存在について、姫夜は幼いころから教えられているが、誰かが神門を使って《跳ぶ》ところを見たことはない。ましてや《跳んだ》こともない。

 神門の多くは岩の柱や巨石を並べたものだ。このヒュウガの神門のように壁と屋根をもつ石室になっているものもあるし、平たい船の形や、天にむかってそそり立つ陽石などさまざまだ。
 神門は中つ国のいたるところにあり、果てはわだつみを越えた外つ国にもあるという。
 つまり一度を《門》をくぐったが最後、いきなり海を隔てた遠き国に跳ばされてしまうこともありうるのだ。

「我らには追っ手がかかろう。だがなんとしても生き延びねばならぬ。そのために男のなりをさせたのだ。よいな」
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