禍津姫戦記
 ヤギラはそれでもまだ何かいいたげに、すがるようにハバキを見た。
 だがハバキは黙っていた。ヤギラはあきらめたように両手をつき、さがりぎわに、一瞬、姫夜へ燃えるようなまなざしを向けた。姫夜はハッとしたように顔をあげたが、そのときにはもうヤギラの姿は廊下の闇のなかに消えていた。

「姫夜、なにか舞いを見せてくれ」

「いいとも」

 姫夜はほっとしたように立ち上がった。
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