禍津姫戦記
 ハバキは言葉の響きを味わうように口のなかでつぶやいた。

「激しい恋の歌になったな」

 姫夜はふっと遠い目になり、胸の紅玉を握りしめ、低い声でうたうように云った。

「ものごころついた時から、兄のそばにいることが多かった――。忙しい父や母の代わりでもあったし、舞いと歌の師としてはつねに厳しく、冷たくさえあった……今、兄はどこでどうしているのだろう?」
< 429 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop