禍津姫戦記
 月が隠れた。
 廊下の闇のなかで――うずくまり、目だけを見開いて息をひそめているものがいた。
 ヤギラだった。
 ヤギラの目は昏く、光の抜け出ることのできぬ深い洞のように、虚ろだった。
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