禍津姫戦記
   *

 うら若い乙女たちはみな好きな花を髪にさし、色鮮やかな紐を腰にまき、懐に余裕のあるものは玉や比礼をまとって、出かけてゆく。
 妻をもたぬ若者たちは、兵士も農民もこの日ばかりはなんのへだたりもなく期待に胸を高鳴らせながら、妻問いのために自分で細工をした櫛や、磨いた玉などささやかな宝を懐にひそませ、そわそわと歩いている。
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