禍津姫戦記
 姫夜は一瞬、はっとしたように目を上げた。だが、何も云わずにふたたび目をふせてしまった。那智はそれをちらりと見て、云った。

「磐座のまわりに岩でさらに二重三重に結界を張りましょう」

「そうだな。用心するに越したことはない」

 那智はいいにくそうに両手をついた。

「もうひとつ。神宝に関してお詫びしなければならぬことがございます」

「何だ」
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