禍津姫戦記
 激しい清浄な気の流れが身ぬちを駆け抜けたのを、ハバキは感じた。その痛みにも似た感覚は懐かしく慕わしいものでもあった。
 振りかえると、姫夜も同じ滝に打たれたように、長い睫をふせ、身を震わせていた。

「ハバキ。禊ぎに入る前に話しておきたいことがある。那智どのと話していて、わかったことだ」

 姫夜の声はなにかを怖れるようにおののいていた。
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