禍津姫戦記
 姫夜は我に返って、かろく一礼すると、それぞれの楽器をみつめた。とたんに目の輝きが戻った。つと、手をのばすと、何かを感じ取ろうとするかのように、楽器の上に手をかざした。ひとつずつ順番に手をかざしてゆき、石笛の上でびく、と手がふるえた。

「この石笛を」

「俺が吹こう」

 ハバキは何かに突き動かされるように立ち上がっていた。

「では、わたしが祈りをささげ終えたら、石笛を吹き始めていただきたい」
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