禍津姫戦記
「では、わたしが祈りをささげ終えたら、石笛を吹き始めていただきたい」

 ハバキがうなづくと、姫夜は松明の火に照らされた館の屋根を見上げた。
一瞬、姫夜の目のふちに光るものが浮かんだように、ハバキには見えた。
 姫夜は庭から見える一番高い山にむかって深々と一礼した。
 火の粉のはぜる音と、近くを流れるらしい急流の音だけが聞こえている。
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