禍津姫戦記
「こうしていてもしかたがない。明日は満月。一足先に磐座へ行こう」

 ハバキは淡々とした声でいった。すでにおもては険しく、目は鋭い輝きを帯び、将の顔になっていた。
 姫夜は、櫃からワザヲギの衣を出して、まとった。初めて神門をくぐったときに着ていたものだ。珠を両手首に巻き、鈴を入れた袋を腰帯にさげた。最後にずしりと重い黄金のひれを肩にかける。
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