禍津姫戦記
「姫夜、なにか感じるか」

 ハバキが小声で短くたずねた。

「いいや、何も。ヤギラはここへむかうかと思ったのだが」

 姫夜の声は緊張にかすれていた。手綱を握る手がふるえている。

「途中、二つの結界を通り抜けましたが、破られたあとはございませんでした」

 那智が脇からささやく。磐座のまわりには二重に結界がめぐらされていた。
 今、ハバキたちがいるのは内の結界のそばだ。
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