禍津姫戦記
「姫夜、一人で背負うな。いくさは一人でするものではない。兵士たちがいる」

 ハバキがじっと炎をみつめている姫夜に云った。
だが姫夜はかたい顔でうなづいただけだった。
 途中、探索に出たものたちが戻ってきて報告し、伝令がいきかった。しかし、ヤギラとアゲハの足取りは闇に塗りつぶされたようにつかめなかった。

「今宵はもう見つかるまい。いったん探索は打ち切ろう」

 ハバキがそう宣言すると、磐座の周辺は静かになった。
 那智が気遣わしげに姫夜をみやった。
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