禍津姫戦記
「姫夜さま、今のうちにすこしお休みなされませ」

「いえ、大丈夫です」

 ここは戦場だ。甘えるわけにはいかない。
 燃え上がる炎が彫像のようなハバキの整った横顔を浮かび上がらせている。
するどくそげた頬、厳しく引き結ばれた唇、強靱なあご。ほとんど冷酷とも取れるような顔を見て、姫夜はモモソヒメが襲ってきた日、ためらわずに宮に火をはなった兄の顔を思い出した。
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