禍津姫戦記
 静寂をやぶって、山を登ってくる複数の足音がした。たいまつをかざして近づいてきたのはカリハとクラトだった。

「どうした、なぜ砦を離れた」

 ハバキが鋭く質した。

「まだ時間がある。連れ去られたのがアゲハだというのはまことか」

 カリハが先にたずねた。

「そうだ。厨から食事を運んだときに連れ去られたのだ」
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