禍津姫戦記
 四方を浄め終わると、今度はうたいながら、弧を描くように長い袖をひるがえして舞い始めた。

「鳴るは滝の水、鳴るは滝の水、日は照るとも絶えずとうたり常にとうたり……」

 高く、低く、響く歌声とあいまって、しだいに舞いは力強さを帯びていく。

「君の千歳を経んことも、天津乙女の羽衣よ」

 炎のはぜる庭に、姫夜のうたう声が一段と高まった。ハバキの吹く石笛の音も庭をたたく雨のようにはずむ。
< 63 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop