禍津姫戦記
 姫夜のことばと同時に、風が強くなり、峰や谷が低くどろどろと鳴り始めた。
 兵士たちはおびえたように顔を見合わせた。

「浮き足立つな。松明に火を入れろ。弓矢隊は外にむかってかまえ、みな位置につけ。ヤギラがあらわれたら狼煙をあげさせよ」

 ハバキが次々と命じた。
 あたりは急速に紫から濃い青い闇へ包まれていこうとしていた。
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