禍津姫戦記
 どろどろと響く不気味な音がしだいに大きくなった。
 ハバキはハッとしたように姫夜をみつめた。
 姫夜は谷ではなく、磐座の縁に立ち尽くしたまままっすぐに石の柱を見つめていた。そのおもてからは一切の表情が消え、見開いた瞳はうつろに青い闇の色を映していた。

(どちらだ。どちらが先に来る?)
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