禍津姫戦記
 いつのまにか――男たちがまとっていたざわめきは完全に消え失せていた。うたにあわせて、からだをゆらしているものがいる。あるものは陶然と、あるものは涙を流しながら、舞いに酔っていた。
 誰からともなく、姫夜の姿に手を合わせ、あるいはひれ伏し、祈り始めた。さらに舞いは激しさを増した。ハバキは肺腑もつぶれよとばかり、笛を吹き鳴らした。

「禍津姫(マガツヒメ)……」

 イスルギがうめくのをハバキは聞いた。
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