禍津姫戦記
その目は驚愕と畏怖に打たれ、声はかすれていた。

「カツラギの水の姫神――それとも、あれこそがうわさに聞く鬼道か――」

 ハバキは笛を吹きながら、水とたわむれ踊る姫夜の姿に圧倒されていた。
 幻視なのか――。さしあげた手の指先から、清らかな水があふれだしている。くるくると舞う細いつまさきをせせらぎが洗っている。
 とん、とほっそりしたからだが飛んで、銀の魚のごとくに、しなやかにうしろに反った。
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