禍津姫戦記
「こちらをお使い下さりませ。もう休まれますか。それとも、粥の椀なりとお持ちいたしましょうか」

 クラトは姫夜がほとんど何も口にしなかったのに目ざとく気づいていたらしかった。
 姫夜は刺すような視線を感じ、全身が冷たくなった。長がこの男にひそかに自分を葬り去れと命じたとしても不思議はない。思わず姫夜はつぶやいた。

「わたしは……ここで、そなたの手にかかって死ぬのか?」

 クラトはじっと姫夜を見つめた。
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