禍津姫戦記
「あの幻のなかで、そなたは白馬に乗っていただろう? これという馬をみつけるのに十日もかかってしまった。すこし気難しいが、よい馬だぞ」
ハバキは落ち着かない様子の馬の背を叩いてやりながら、云った。
「ほとんど部屋から出ぬそうだな。それではいつまでたっても館の暮らしに慣れぬぞ」
姫夜はうなだれた。長のイスルギから館にいるゆるしは出たものの、庭ばかり眺めていたからだ。
ハバキは落ち着かない様子の馬の背を叩いてやりながら、云った。
「ほとんど部屋から出ぬそうだな。それではいつまでたっても館の暮らしに慣れぬぞ」
姫夜はうなだれた。長のイスルギから館にいるゆるしは出たものの、庭ばかり眺めていたからだ。