禍津姫戦記
ハバキは西を睨みながら云った。
「キビの軍勢が初めて山向こうの地に攻め入ってきたのは、十一年前だ。俺はまだ七つで戦さに出たことはなかった。それ以来、性懲りもなくきゃつらは三年に一度は戦さをしかけてくる。
去年大きな戦さがあって、そのときの傷がもとで、長は寝込んだ。奴らがそのことをかぎつければ、ここが踏み荒らされるのも時間の問題だろう。だから一刻も早く、近隣の長たちとの結束を固め、王として立ちたい。
今の俺に必要なのは神意だ。他の長たちに、俺が王となる確乎たるあかしを見せたいのだ。おまえが新しき神殿で俺のとなりに立ち、神意を伝えてくれれば――」
「キビの軍勢が初めて山向こうの地に攻め入ってきたのは、十一年前だ。俺はまだ七つで戦さに出たことはなかった。それ以来、性懲りもなくきゃつらは三年に一度は戦さをしかけてくる。
去年大きな戦さがあって、そのときの傷がもとで、長は寝込んだ。奴らがそのことをかぎつければ、ここが踏み荒らされるのも時間の問題だろう。だから一刻も早く、近隣の長たちとの結束を固め、王として立ちたい。
今の俺に必要なのは神意だ。他の長たちに、俺が王となる確乎たるあかしを見せたいのだ。おまえが新しき神殿で俺のとなりに立ち、神意を伝えてくれれば――」