禍津姫戦記
「わたしは――」

 姫夜はうろたえたようにハバキの話を遮った。

「神につかえる身には違いない。だがまことのことを云えば、昨夜のように大勢の人の前で舞うのさえ初めてだった。いつもは父や母の前で舞うだけで満足していた……自分の里から出たことさえなかったのだ」

「おまえの父と母もカンナギだったのか。なぜあのときたった一人で磐座にいた?」

 姫夜は長いまつげを伏せた。ワザヲギの秘密をもらすことはできない。
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