禍津姫戦記
「そうらしいな。ゆうべもおまえは、うなされていた」

 ハバキは山々をにらんだまま、云った。
 姫夜は唖然とした。

「どうして、そのことを……」

「気づかなかったのか。俺は衝立で隔てたとなりの部屋に寝ているのだ。それほど広い館ではないからな」

 姫夜の頬は真っ赤になった。では自分がもらしていたすすり泣きも、みな聞かれてしまっていたのか。
 そのとき、ハバキを呼ぶ声と慌ただしい蹄の音が近づいてきた。
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