禍津姫戦記
「は。まず人のこぶしほどもあるヒョウが降ったのが十日前。
その後、三本足のヒナが生まれ、牛の乳が枯れ、井戸水が苦水に変わったと。
若いものに村中を調べさせたところ、西の道切りが鋭利な刃物で断ち切られ、無惨に踏みにじられていたそうにございます」

 道切りとは、村と村の境に張られた綱で、ワラで編んだヒトガタや陽物を吊して魔よけとし、ケガレを祓うと信じられている。
 ハバキは苦虫を噛み潰したような顔になった。
< 90 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop