禍津姫戦記
 ハバキは一行に馬からおりるよう命じ、あたりに潜んでいるものはいないか調べさせた。
 姫夜はかがみこんで道切りの綱に触れたとたん、がくりと膝をついた。蛇にかまれて毒がまわるように、脳裏にあるまがまがしい光景が浮かんだ。

「この近くに、ほこらが……」

 姫夜はうめくように云った。

「そのなかの神像石(カムカタイシ)が……何者かに穢された」

 みなぎょっとしたように姫夜を見た。カリハが姫夜の腕をつかんで云った。
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