禍津姫戦記
 姫夜はあおざめた顔で、首を振った。

「神はもうここにはおわさぬ。だがこのままにしておくわけにもゆかぬ。岩は持ち帰り、清めたうえで土に埋めるのがよい」

「では馬で運ばせよう。クラトの馬にこの岩をのせよ」

 姫夜はほっと、息をついた。吐き気と目眩はだいぶ和らいでいたが、冷たい汗が噴き出し、手足が冷え切っていた。

(邪気の源は、どこか別な場所にあるにちがいない)
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