溺愛MOON
黙って俯いたまま自分の部屋の扉に向かった。

泣いてしまわないようにするのが精いっぱいで、何かを言おうとする気力も湧き起こらなかった。


「部屋。来ないの?」


それなのにかぐやは私を引き止めようとする。

あんなに残酷なことを言っておいて、しておいて。


「俺の」だなんて言ってくれた後に、「関係ない」はキツいよ……。


黙ったまま頭を振る。

たいしてお酒を飲んだわけでもないのに頭が痛い。


「香月はさ」


かぐやが話しかけてきても無視してバッグの中からカギを探った。

こんな時に限って見つからない。


かぐやの聞きたくない言葉は勝手に耳へと入ってくる。


「男だったら誰でもいいの?」


カアッと喉の奥が熱くなった。

振り向きざまにかぐやにバッグを投げつけたのは、完全に酔った勢いだったと思う。
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