溺愛MOON
海は真っ暗で押し寄せる波しぶきだけが、月明かりの下で薄く光彩を放つ。

飲みこまれそう、この海に。


「うう……っ」


海から来た王子様、だなんて。

本気で思ってるわけじゃないよ。


始めは、自分が行き詰ってるからおとぎ話の王子様に逃げただけだったかもしれない。

だけど……。


少し子どもっぽく拗ねるかぐや。

月を見つめてぼんやりする時のどこか寂しげな瞳。


華奢だけど意外に筋肉のついた腕や、細い腰。

無造作に伸びた前髪。


彼を形成する全部のものが。


「好きなのに……っ」


私の中はこんなにも彼に支配されているというのに。


「かぐやだからに決まってるじゃん……っ」


叶わない、想い。
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