溺愛MOON
「明日は家に来る?」


かぐやの問いかけに小さく首を振った。

都合のいい女。

そんな単語が頭に浮かんで、私はふっと息を吐くように笑った。


「何で笑うの」

「……ううん。明日は高橋さんのお婆ちゃんのところへ行くから。他のお年寄りだけの家も、まだお庭の片づけ残ってるし」

「そう」

「……」

「……香月」

「……何?」

「近いうちに俺、この島を出るよ」


心臓がわし掴みにされたのかと思った。

彼が言い出すのは、良い話なんかじゃないって分かっていたはずなのに。


かぐやの口から聞くそれが、あまりにも衝撃的で。

私はいつか来る別れを、全然現実のものとして捉えてなかったんだと改めて思い知らされた。


「お……、迎えが来たの……?」

「あぁ、うん。そう」
< 120 / 147 >

この作品をシェア

pagetop