溺愛MOON
――そっか。

おやすみ。もう寝るね。



私にできたのはその場から逃げることだけだった。





「香月ちゃん、キュウリがたくさんできてるで、持っていきな」

「あっ、うん。ありがとう、高橋さん」


高橋さんのお庭には小さな畑がある。

トマトにナスにキュウリ。


太陽を存分に浴びた夏野菜がたわわに実る。


足を痛めた高橋さんの代わりに水をやり、肥料をまくのも私がしている。

はさみで実った野菜を収穫する。


暑い。

麦わら帽子を通して日差しが焼けつくように肌を焼く。


くらくらする。


――昨日は一睡もできなかった。
< 121 / 147 >

この作品をシェア

pagetop