溺愛MOON
「香月ちゃん。元気がないねえ。夏バテかねぇ。もっと野菜持っていきな」

「……高橋さん」

「香月ちゃんが倒れたら大変だからねぇ。毎日、来てくれて本当に助かってるだよ。他のみんなもそう言っとるよ」

「……ありがとう」


目の端にじわっと涙が溜まった。

少し前までは違う世界の人達だと思っていた島のみんなに、こんなにも慰められる。


支えられる。

一人じゃない、あったかい場所。


恋を失うのはとても辛いけれど。


「……私、この島に来られてよかった」

「本当かい? そりゃ嬉しいねえ」

「この島が好きだよ」


自分の居場所を見つけることができたから、こうして今も立っていられる。


やっぱりかぐやとの夜の逢瀬が夢の世界のできごとで、眩しい太陽の下で立っている今が私の現実なんだと。

そう思うことで何とか自分を支えていた。


だけど一度近づいてしまった境界線は薄れることはなく、現実は色濃さを増して私を追い詰めることになった。
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